なぜ義務化?
相続登記の申請は、これまで義務ではありませんでした。
その結果、相続登記がされず、不動産の登記情報(昔で言う登記簿)を見ても現在の所有者やその連絡先が分からない土地が、全国の22%(H29国交省調査)にも上ることとなってしまいました。
これらの土地を「所有者不明土地」と呼びますが、所有者不明土地は、公共事業や不動産取引を困難にしたり、管理者がおらずに放置されてしまったり、管理不全により隣地に悪影響をもたらしたりと・・・何かと問題が起きるようになってしまいました。
所有者の捜索には多大な労力と費用が必要であったり、何世代にもわたる相続のおかげで相続人がネズミ算式に増えて話し合いができないケースもたくさんあります。
今後この事態は更に深刻化するおそれがあることも踏まえて、所有者不明土地の発生を予防するために、相続登記を義務化することとなったのです。
相続登記義務化の内容
義務化の内容は、おおまかに以下のとおりです。
- 2024年4月1日より、義務化されました。
- 相続人が不動産の取得を知った日(※)から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。
- 正当な理由なく、相続登記を怠った場合は、10万円以下の過料に科される可能性があります。
- 2024年4月1日以降に発生した相続だけでなく、それ以前に所有者が亡くなっているにもかかわらず、相続登記が行われていない不動産も対象です。この場合は、原則、2024年4月1日より3年以内に相続登記の申請が必要です。
※「不動産の取得を知った日」とは、一般的には、不動産の所有者が亡くなった日です。後から不動産があることを知ったケースや、後から自分が相続人であることを知ったケースであれば、それらを知った日となります。
その他の変更点
相続登記の義務化以外にも、所有者不明土地の解消に向けて、様々な制度が作られました。
いくつかご紹介します。
住所変更登記等の義務化
登記記録(登記簿)に所有者の住所・氏名が登記されますが、引越しをするたびに、住所変更の登記をする方はほとんどいないでしょう。
しかし、2026年4月1日より住所・氏名変更登記も義務化され、変更があった日から2年以内に登記が必要となります。登記された住所や氏名が変更されないまま、所有者が不明になることを防ぐためです。
なお、2026年4月1日より前に住所・氏名に変更があったにもかかわらず、まだ変更登記が済んでいない場合には、2026年4月1日より2年以内に登記が必要となりますので、ご注意下さい。
こちらは罰則規定もあり、正当な理由なく登記を怠ると、5万円以下の過料に科される可能性があります。
遺産分割協議は10年以内に
今までは、遺産分割協議に期限などありませんでしたので、所有者が亡くなってから10年経過後でも、20年経過後でも、遺産分割の話し合いができました。
しかし、期限がないということは、何年経っても誰が所有者かはっきりしないことにもなるため、今後は、特別受益と寄与分の主張をする場合には相続開始の時から10年以内という期限が設けられました。
※特別受益・寄与分についてはこちら
ただし、相続人の全員が合意すれば、10年経過後でも特別受益や寄与分を考慮した遺産分割は可能です。
所有不動産記録証明制度
これまでも、市役所などで固定資産の名寄帳という書類を取ることによって、所有不動産がどれだけあるのか調べることができましたが、名寄帳には以下のような問題点もありました。
・自治体によっては、固定資産税が非課税の不動産(私道など)が載らない場合がある
・自治体ごとに発行されるので、他の自治体にある不動産は分からない
・他の自治体の不動産も調べたい場合は、手あたり次第請求してみるしかない
このような問題点から、他にも不動産があることに気付かず、相続登記が漏れてしまうケースがありました。
そこで、2026年2月2日より法務局が所有不動産全ての一覧表を証明書として発行してくれることとなりました。
今後はより確実に相続した不動産を確認することができるようになり、相続登記の漏れを防ぐことが可能となります。
土地を国庫に帰属させる制度
相続した土地を手放したい場合に、国庫に帰属させる制度が作られました。
ただし、どんな土地でも良いというわけではなく、さらには国庫に帰属させるために一定の負担金を納めなければなりません。