遺言さえあれば・・・
様々なご相談を頂く中で、遺言さえあれば・・・と思う事案がよくあります。
例えば、Aさんが亡くなり、相続人は妻Bと、子Cだとします。
妻Bは数年前から認知症の症状が進み、現在は施設で暮らしています。たまに面会に来るCさんのことも分からないときがあります。
遺産は、自宅不動産のみで、Aさんの死後は誰も住まないので、出来れば売却してそのお金を妻Bさんの施設費等に充てたいと考えていました。
しかし、このケースの場合、不動産は簡単には売れません。
理由は次のとおりです。
<1つ目の相続パターン>
まず考えられる相続のパターンは、法律で定められているとおり、B・Cで不動産を相続する方法です。
この場合、法定相続分の相続はできますが、その後に売却するとなると、認知症のBさんに成年後見人を付けるなどの方法が必要になります。
認知症の程度にもよるものの、このケースでは、Bさんは不動産を売却するなどの法律行為を一人ではできないからです。
<二つ目の相続パターン>
では、不動産を最初からCさんの名義にして、Cさんが一人で売却する方法はどうでしょう。
この方法も、認知症のBさんに成年後見人を付けるなどの方法が必要になります。
不動産をCさんの名義にするには、相続人全員(B・C)で遺産分割協議をする必要がありますが、遺産分割協議も認知症のBさんは一人で参加できないからです。
このケースでは、Aさんが生前に子Cさんに相続させる遺言を残すことで、Cさんが単独で不動産を相続し、売却するところまで可能でした。
しかし、遺言が無いため、成年後見人の選任を裁判所に申立てなければならず、時間と費用が余分にかかることとなります(※)。
遺言を書いておくことで、残された家族の方がとても助かるケースがたくさんあります。
ご自分の場合は遺言を書いておいた方が良いか?などのご相談でも結構です。是非、一度専門家へご相談なさって下さい。
※成年後見人を付けることで良いこともたくさんあります。このケースでは、不動産の売却または遺産分割協議のためだけに、成年後見制度を利用することとなり、その意味では、遺言に比べて時間と費用がかかることになる、ということです。